目次
- 板金工事の見積書は「本体は㎡、役物はm、雨どいはmと個」で並べる
- 完成形の内訳を先に見る(記入例の全体)
- 「一式」を使ってよい行と使わない行
- 記入例の前提にする建物と数量をそろえる
- 例の建物:間口10m×奥行8mの切妻、4寸勾配
- 拾った数量を見積書の行に置き換える対応表
- 屋根本体はガルバリウム鋼板の㎡単価で書く
- 伸び率込みの実面積で書き、平面積は書かない
- 材工共で出すか、材料と手間を分けるか
- 既存撤去・下葺き・カバー工法の行の分け方
- 役物の単価はm単価で、種類ごとに1行ずつ並べる
- 展開幅が違う役物を同じm単価にしない
- 端部加工・コーナー・貫板は「箇所」や「m」で別行にする
- 雨どいの見積りは「軒樋・竪樋はm」「部材は個」に分ける
- 見積書はmで書き、発注する本数は社内で持つ
- 本で仕入れた雨どいをm単価に直す計算
- 元請や施主から聞き返されやすい行と、その直し方
- ロス・端数・残材をどこに入れるか
- 備考欄に書いておくこと
- SITE BOARD(サイトボード)で拾った数量と単価を見積書の行に入れる
- 資材費マスタにガルバ鋼板・役物・雨どいを登録する
- 竪樋L2700を「1本=2.7m」で登録し、m単価で呼び出す
- 仕入先の請求書から単価を更新する(C+AIプラン)
- 次の見積りから試すこと
屋根から降りて、夜に板金工事の見積書を作る日が続いていませんか。疲れていると、役物や雨どいをつい「一式」にまとめたくなります。そのまま出すと、翌朝に元請から「一式の中身は?」と電話が来て、拾い出しのメモをもう一度開くことになります。この記事では、拾った数量をそのまま見積書の行に置き換える並べ方を、1棟分の記入例で示します。読み終えるころには、聞き返されにくい内訳の型が手元に残ります。
板金工事の見積書は「本体は㎡、役物はm、雨どいはmと個」で並べる
結論から書きます。板金工事の見積書は、次の単位で行を分けると読みやすくなります。
- 屋根本体:ガルバリウム鋼板の㎡単価。数量は伸び率込みの実面積
- 役物:棟包み・ケラバ水切り・軒先唐草などを、種類ごとにm単価で1行ずつ
- 雨どい:軒樋・竪樋はm、集水器や止まりなどの部材は個・箇所
並び順は「既存撤去→下葺き→本体→役物→雨どい→付帯(端部加工・諸経費)」にします。屋根を剥がし、ルーフィングを張り、板を葺き、役物で納めて、最後に樋を掛けます。現場で手を動かす順番と同じなので、元請の担当者も施主も、上から順に工事を思い浮かべながら読めます。
拾い出しのメモに書いた数量は、ほとんどがこの単位で出ているはずです。屋根面積は㎡、棟やケラバはm、竪樋の位置は箇所で数えています。見積書の単位をメモに合わせれば、数字を行に写すだけで済みます。「この数字はどこから?」と聞かれても、メモの同じ行を見せれば答えられます。
完成形の内訳を先に見る(記入例の全体)
後の節で使う建物の内訳を、先に全部並べます。建物は間口10m×奥行8mの切妻、4寸勾配で、既存屋根を撤去する葺き替えです。
| 名称 | 数量 | 単位 | 単価(円) |
|---|---|---|---|
| 既存屋根撤去(化粧スレート) | 86.2 | ㎡ | 1,500 |
| 廃材処分(撤去材の運搬・処分) | 1 | 式 | 70,000 |
| 野地合板増し張り 12mm | 86.2 | ㎡ | 2,800 |
| 下葺き 改質アスファルトルーフィング | 86.2 | ㎡ | 900 |
| 立平葺き ガルバリウム鋼板 0.35mm ブラック | 86.2 | ㎡ | 6,500 |
| 棟貫板 | 10.0 | m | 1,800 |
| 棟包み | 10.0 | m | 4,500 |
| ケラバ水切り | 17.3 | m | 2,800 |
| 軒先唐草 | 20.0 | m | 2,200 |
| 軒樋 半丸105 ブラック(金具含む) | 20.0 | m | 3,200 |
| 竪樋 60 ブラック(金具含む) | 12.0 | m | 3,000 |
| 集水器 | 2 | 個 | 3,500 |
| 軒樋止まり | 4 | 個 | 1,200 |
| ケラバ端部加工 | 8 | 箇所 | 2,000 |
| 運搬費・養生 | 1 | 式 | 30,000 |
| 諸経費 | 1 | 式 | 50,000 |
単価の数字はすべて記入例です。ガルバリウム鋼板の単価は、地域・板厚・メーカー・塗膜の種類で変わります。この表の単価は使わず、自社の単価に置き換えてください。雨どいの行は材料と取付手間をまとめた材工共の単価にしています。
行数は16行です。内訳は、撤去と下地で4行、本体1行、役物4行、雨どい4行、付帯3行。住宅1棟の屋根なら、このくらいの行数でA4縦1枚に収まります。元請の担当者が全体を一目でつかめる量です。30行を超えてきたら、同じ材料を細かく分けすぎていないかを見直します。
「一式」を使ってよい行と使わない行
一式がすべて悪いわけではありません。分ける基準は「数量で表せるか」と「金額の大きさ」です。
| 区分 | 該当する行 | 理由 |
|---|---|---|
| 一式でよい | 運搬費、養生、廃材処分、諸経費 | 数量で表しにくく、全体に占める金額が小さい |
| 一式にしない | 本体の面積、役物の長さ、雨どいの長さと部材の数 | 数量で出せるため、一式にすると根拠を聞かれやすい |
どうしても一式でまとめたい行は、名称の後ろに( )書きで中身を書きます。たとえば「役物取付(棟包み・ケラバ水切り・軒先唐草 含む) 一式」です。何が入っているかが分かるだけで、「ケラバは入っていますか?」という確認の電話が減ります。
記入例の前提にする建物と数量をそろえる
この先の節では、最初から最後まで同じ1棟の数字を使います。節ごとに面積や長さが変わると、自分の現場に当てはめるときに迷うためです。
伸び率・展開幅・雨どいのサイズの計算そのものは、ここでは扱いません。それぞれ別の記事で手順を書いています。「屋根の伸び率早見表」「役物の展開幅の出し方」「雨どいのサイズの選び方」は、コラム一覧から探せます。この記事で扱うのは、出た数量を見積書のどの行に、どの単位で書くかです。
例の建物:間口10m×奥行8mの切妻、4寸勾配

図のように、切妻屋根は棟が1本、ケラバが4か所、軒先が2面です。数量は次のとおりです。
- 平面積:軒の出を含めて10m×8m=80㎡
- 屋根の実面積:80㎡×1.077(4寸勾配の伸び率)=86.16㎡。見積書には小数第1位に切り上げて86.2㎡と書きます
- 棟:10m方向に1本。棟包みは10.0m
- ケラバ:1か所あたり4m×1.077=4.308m。4か所の合計17.232mを切り上げて17.3m
- 軒先:10m×2面=20.0m。軒先唐草も軒樋も20.0m
ケラバの切り上げには、つまずきやすい点があります。1か所ずつ切り上げると4.4m×4か所=17.6mとなり、合計してから切り上げた17.3mより0.3m多くなります。切り上げは、合計を出してから最後に1回だけ行います。
拾った数量を見積書の行に置き換える対応表
拾い出しの項目と見積書の行を、1対1で対応させます。竪樋は2か所×高さ6m=12.0mです。軒樋の止まりは、軒樋2列×両端で4個になります。
| 拾い出しの項目 | 見積書の名称 | 数量 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 屋根面積(伸び率込み) | 立平葺き ガルバリウム鋼板 0.35mm | 86.2 | ㎡ |
| 屋根面積(伸び率込み) | 下葺き 改質アスファルトルーフィング | 86.2 | ㎡ |
| 棟の長さ | 棟包み/棟貫板 | 10.0 | m |
| ケラバの長さ(4か所) | ケラバ水切り | 17.3 | m |
| 軒の長さ(2面) | 軒先唐草/軒樋 半丸105 | 20.0 | m |
| 竪樋の長さ(2か所×6m) | 竪樋 60 | 12.0 | m |
| 竪樋の位置 | 集水器 | 2 | 個 |
| 軒樋の端(2列×両端) | 軒樋止まり | 4 | 個 |
| ケラバの端(棟側4・軒側4) | ケラバ端部加工 | 8 | 箇所 |
メモと見積書で、同じ数字と同じ単位を使うことが検算の近道です。メモが「ケラバ 17.232m」なのに見積書が「17.3m」なら、切り上げただけだとすぐ分かります。メモが「ケラバ 4本」で見積書が「17.3m」だと、照らし合わせるたびに計算し直すことになります。メモの段階から、見積書と同じ単位で書いておくと楽です。
屋根本体はガルバリウム鋼板の㎡単価で書く
本体の行の名称には「工法+材料+板厚+色」を入れます。記入例では「立平葺き ガルバリウム鋼板 0.35mm ブラック」です。
金額は86.2㎡×6,500円=560,300円になります。検算は2つに分けると確実です。86㎡×6,500円=559,000円、0.2㎡×6,500円=1,300円で、合計560,300円です。
名称に板厚と色まで書く理由は、単価がそこで変わるからです。同じガルバリウム鋼板でも、0.35mmと0.4mmでは材料費が違います。塗膜の種類が違っても単価は変わります。名称に書いてあれば、施主が相見積りを取ったときも条件をそろえて比べてもらえます。「なぜ他社より高いのか」と聞かれたときにも、板厚や塗膜の違いを説明する根拠になります。
伸び率込みの実面積で書き、平面積は書かない
屋根の見積りに平面積の80㎡をそのまま書くと、材料も手間も足りなくなります。記入例で比べてみます。
| 数量の取り方 | 数量 | 金額(単価6,500円) |
|---|---|---|
| 平面積のまま | 80.0㎡ | 520,000円 |
| 伸び率込みの実面積 | 86.2㎡ | 560,300円 |
差は560,300円−520,000円=40,300円です。この分は、自社が負担することになります。
見積書に書く数量は、伸び率を掛けた86.2㎡にします。図面の面積と違うと元請に指摘されそうなら、備考に「4寸勾配 伸び率1.077」と一言添えます。根拠が書いてあれば、聞き返しはほぼ起きません。
働き幅や重ね代によるロスは、本体の数量に黙って混ぜないでください。86.2㎡が90㎡になっていると、元請は面積の拾い間違いを疑います。ロスを数量に乗せるか単価に含めるかは、社内で1つに決めておきます。決め方は後の「ロス・端数・残材をどこに入れるか」で説明します。
材工共で出すか、材料と手間を分けるか
材工共は、材料と施工手間を1行の㎡単価にまとめる書き方です。行が少なく済むため、施主向けの見積書では読みやすくなります。
元請から材料費と労務費を分けた内訳を求められたら、同じ86.2㎡で2行に分けます。
- 立平葺き ガルバリウム鋼板 0.35mm ブラック(材料):86.2㎡×3,800円=327,560円
- 立平葺き 施工手間:86.2㎡×2,700円=232,740円
2行を足すと560,300円で、材工共の金額と一致します。単価も3,800円+2,700円=6,500円です。分けても合計が変わらないことを確かめておくと、元請とのやり取りで食い違いが起きません。
材料費・労務費・法定福利費の内訳の考え方は、別の記事「建設業法改正の見積書の書き方」で扱っています。法令の細かな扱いは、国土交通省のウェブサイトで最新の情報を確認してください。
どちらで出すかは、取引先や会社の状況によって異なります。「A工務店は材工共、B建設は材料と手間を分ける」のように、相手ごとに書式を決めておくと迷いません。
既存撤去・下葺き・カバー工法の行の分け方
葺き替えでは、本体とは別に次の行を立てます。
- 既存屋根撤去:86.2㎡
- 廃材処分:一式、または㎡
- 野地合板増し張り:86.2㎡
下葺き材(改質アスファルトルーフィングなど)も、㎡で別の行にします。数量は本体と同じ86.2㎡にそろえます。本体と下葺きの数量がずれていると、どちらかの拾い間違いを疑われます。
カバー工法では、既存屋根撤去の行が無くなります。その代わりに、既存棟包みの撤去や貫板交換を、役物の前に別の行で書きます。撤去する棟の長さは、新しい棟包みと同じ10.0mです。
役物の単価はm単価で、種類ごとに1行ずつ並べる
棟包み・ケラバ水切り・軒先唐草・谷樋・壁取合い水切りは、名称と展開幅が違えば別の行にします。記入例の数量は、棟包み10.0m、ケラバ水切り17.3m、軒先唐草20.0mです。棟貫板も10.0mで別の行にしています。
役物をまとめて「役物一式」にすると、追加や減額のときに困ります。記入例の役物4行の金額は次のとおりです。
| 名称 | 数量 | 単価(円) | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 棟貫板 | 10.0m | 1,800 | 18,000 |
| 棟包み | 10.0m | 4,500 | 45,000 |
| ケラバ水切り | 17.3m | 2,800 | 48,440 |
| 軒先唐草 | 20.0m | 2,200 | 44,000 |
合計は155,440円です。これを「役物一式 155,440円」と書いたとします。後から「ケラバを2m減らしたらいくら下がるか」と聞かれても、一式では答えられません。行を分けていれば、2.0m×2,800円=5,600円の減額だとすぐに返せます。
展開幅が違う役物を同じm単価にしない
棟包みとケラバ水切りでは、展開幅が違います。展開幅が違えば、コイル1枚から取れる本数も変わります。同じm単価にすると、展開幅の広い役物ほど材料原価が単価に合わなくなります。
名称の後ろに展開幅を書いておく方法があります。例:「ケラバ水切り 展開幅○mm」。元請の担当者は、展開幅を見れば材料の量が妥当かを確かめられます。
展開幅とコイルの取り数の計算は、既存記事「役物の展開幅の出し方」に任せます。見積りを作る側では、単価表に「展開幅」の欄を1列持つことを勧めます。単価表に名称・展開幅・m単価が並んでいれば、展開幅が変わった役物の単価を見直す目安になります。
端部加工・コーナー・貫板は「箇所」や「m」で別行にする
棟の端部処理、ケラバと軒先の取合い、谷の納まりは、長さで測れない加工です。こうした加工は「箇所」で数えます。
記入例では、ケラバの端部を8箇所としました。数え方は、棟側4か所と軒側4か所です。この数え方を備考に書いておきます。施主に「8箇所って何ですか」と聞かれる前に、答えが紙に書いてある状態にします。
棟の下地の貫板は、mで別の行にします。数量は棟包みと同じ10.0mです。貫板が棟包みの単価に含まれていると、施主は交換するのかしないのかが分かりません。別の行にしておけば、「貫板は傷んでいないので交換なしで」という判断を施主ができます。減額もその行を消すだけで済みます。
雨どいの見積りは「軒樋・竪樋はm」「部材は個」に分ける
雨どいは、長さで測るものと数で数えるものを分けます。軒樋は20.0m、竪樋は12.0mと長さで書きます。名称には、サイズと形(半丸・角形)と色を入れます。記入例では「軒樋 半丸105 ブラック」「竪樋 60 ブラック」です。
集水器2個、止まり4個は、個数で別の行にします。エルボやソケットも、実際に数えた数を個で別行にします。記入例の雨どい4行の金額は、次のとおりです。
- 軒樋:20.0m×3,200円=64,000円
- 竪樋:12.0m×3,000円=36,000円
- 集水器:2個×3,500円=7,000円
- 軒樋止まり:4個×1,200円=4,800円
合計は111,800円です。雨どいのサイズや竪樋の本数の決め方は、既存記事「雨どいのサイズの選び方」に任せます。ここでは行の並べ方に絞ります。
見積書はmで書き、発注する本数は社内で持つ
竪樋は、定尺L2700(1本=2.7m)で仕入れることが多い材料です。12.0m÷2.7m=4.44なので、発注は5本になります。
見積書に「竪樋 5本」と書くと、施主には5本すべてを使うように見えます。そして「余った分はどうなるのか」と聞かれます。見積書は12.0mのm単価で書きます。発注本数の5本は、社内の拾い出しメモや発注書で管理します。こうすると、見積書は現場で使う長さ、発注書は仕入れる本数で、どちらの数字も現場の実態と合います。
本で仕入れた雨どいをm単価に直す計算
m単価は「1本の仕入単価÷1本の長さ」で出します。例として、竪樋1本の仕入単価を1,820円とします。
1,820円÷2.7m=674.07円/m
検算は逆向きに掛けます。674.07円×2.7m=1,819.99円で、ほぼ1,820円に戻ります。
この674.07円は材料の原価です。材工共の単価を決めるときの、材料分の土台になります。残材の分も確かめておきます。5本で仕入れると5×1,820円=9,100円です。見積りで使う12.0m分は12.0×674.07円=8,088.84円です。差の1,011.16円が残材の分で、材工共の単価の中で吸収できるかを確かめます。
割り切れない単価は、円未満の扱いを社内で決めておきます。切り上げなら675円、四捨五入なら674円です。12.0mでは8,100円と8,088円で、12円の差です。金額は小さくても、人によって扱いが違うと検算が合わなくなります。
支持金具(受け金具・でんでん)は、扱いを先に決めます。軒樋と竪樋のm単価に含めるか、個数で別行にするかです。記入例ではm単価に含め、名称に「金具含む」と書きました。
元請や施主から聞き返されやすい行と、その直し方
聞き返されやすい行は、だいたい次の3つです。
| 聞き返される行 | よくある書き方 | 直し方 |
|---|---|---|
| 単位が混ざった行 | 竪樋 5本(他の樋はm) | 長さはmにそろえ、本数は社内で持つ |
| 数量の根拠が見えない行 | 屋根 86.2㎡(図面は80㎡) | 備考に「4寸勾配 伸び率1.077」 |
| 色や板厚が無い行 | ガルバ屋根 86.2㎡ | 「0.35mm ブラック」まで名称に入れる |
提出前の確認は、次の順で行います。
- 拾い出しメモと見積書を横に並べます
- 見積書の上の行から、メモの同じ項目に印を付けます
- 数量と単位が同じかを1行ずつ見ます。切り上げた行は、元の数字も確かめます
- 印が付かなかったメモの項目が無いかを見ます(拾ったのに見積書に載せ忘れた行)
- 「数量×単価=金額」を、本体と金額の大きい行だけでも電卓で検算します
4番目で見つかるのは、貫板や止まりのような小さな部材の載せ忘れです。金額は小さくても、後から追加で請求しにくい行です。
一度聞き返された項目は、次回から備考の定型文にします。「伸び率の根拠は?」と聞かれたなら、次から「○寸勾配 伸び率○○」を必ず書きます。同じ説明を毎回電話でする手間が無くなります。
ロス・端数・残材をどこに入れるか
端数のルールは1つに決めます。記入例では「計算は細かく出し、見積書に書くときに小数第1位へ切り上げる」にしました。86.16㎡は86.2㎡、17.232mは17.3mです。
ロスは、数量に上乗せするか、単価に含めるかのどちらかにします。たとえばロスを5%見込む場合です。
- 数量に乗せる:86.2㎡×1.05=90.51㎡、切り上げて90.6㎡。単価はロスを含まない6,500円
- 単価に含める:数量は86.2㎡のまま。単価をロス込みで決める
気を付けたいのは、両方に入れてしまうことです。90.6㎡にロス込みの単価を掛けると、ロスを二重に取ります。相見積りで高く見え、元請に数量を指摘されるきっかけにもなります。メモと見積書の数量を一致させたいなら、単価に含める方が検算は楽です。
定尺物の残材は、見積書の数量に出しません。竪樋の例のように、m単価に含めるか、社内の発注数量で吸収します。
備考欄に書いておくこと
備考欄は、聞き返しを先回りして答える場所です。記入例では次のように書きます。
- 屋根材:ガルバリウム鋼板 0.35mm、色ブラック、塗膜の種類(メーカー指定の有無も)
- 数量:4寸勾配、伸び率1.077を掛けた実面積
- 雨どい:軒樋・竪樋は支持金具を含む
- 別途:足場、既存雨どいの撤去、アンテナ・電気設備の脱着
- 有効期限:発行日から○日(材料価格が変わった場合は見直します)
色と塗膜を書いておくと、施主が色を変えたいと言ったときに単価が変わる根拠になります。「別途」を書いておけば、足場代が入っていると思われる行き違いも防げます。有効期限は、鋼板の値上がりが続く時期ほど役に立ちます。
SITE BOARD(サイトボード)で拾った数量と単価を見積書の行に入れる
ここからは、SITE BOARD を使う場合の入れ方です。SITE BOARD は、見積り・積算・工程表などをまとめて管理するクラウドの業務管理システムです。
見積りと積算の明細で名称を入力すると、「資材費」マスタに登録した資材が候補に出ます。候補は「資材」のタグ付きで、最大10件です。選ぶと、単位と単価がまとめて入ります。単価表を見ながら打ち込む手間が無くなり、「m」と「本」の打ち間違いも起きにくくなります。

画面の下にある明細表の名称の欄が、候補を呼び出す場所です。入る値は、見積りと積算で違います。
| 画面 | 単価に入る値 | あわせて入る値 |
|---|---|---|
| 見積り | 提出単価 | 単位、資材費(原価)に仕入単価 |
| 積算 | 仕入単価(原価) | 単位、費目「材料費」 |
候補から選んだ後にマスタの単価を変えても、作成済みの見積りや積算の単価は変わりません。選んだ時点の値が入るためです。過去に出した見積書の金額が、値上げの登録で勝手に変わることはありません。
積算から見積りを作る流れは、既存記事「積算から見積りを作成する手順」で説明しています。コラム一覧から探せます。
資材費マスタにガルバ鋼板・役物・雨どいを登録する
サイドバー「マスタ」>「資材費」を開き、右上の「+ 新規登録」を押します。資材名・規格・カラー・単位・仕入単価・提出単価を入れて、「登録する」を押します。必須は「資材名」だけです。

画面のとおり、規格とカラーは資材名とは別の欄で持てます。ただし、同じ資材名は登録できません。資材名にも規格まで入れて、板厚違いを見分けられるようにします。
「項目名」には、ふだん見積りで使う呼び方を1行に1つ入れます。仕入先の品名が長くても、項目名を入力すれば候補に出ます。規格が違う資材には、同じ項目名を付けられます。たとえば「ガルバ鋼板」という項目名を、規格「3尺」と「6尺」の資材の両方に付けます。見積りで「ガルバ鋼板」と入力すると両方が候補に出て、「規格」の欄で見分けて選べます。
色違い・板厚違いは、一覧の「複製」を使うと早く登録できます。元の資材の内容が写った登録画面が開くので、資材名と規格を書き換えて「登録する」を押します。「複製」を押しただけでは保存されません。元の資材の単価履歴は写らない点にも注意してください。

仕入単価と提出単価の両方を入れると、一覧に粗利率が出ます。計算は(1−仕入単価÷提出単価)×100です。仕入単価1,820円、提出単価2,600円なら、(1−0.7)×100=30%になります。鋼板が値上がりしたときに、粗利率の下がった行から見直せます。
竪樋L2700を「1本=2.7m」で登録し、m単価で呼び出す
竪樋は「本」で仕入れて「m」で見積もる材料です。単位「本」、仕入単価1,820円で登録してから、編集画面の「単位を換えた単価」で「+ 単位を足す」を押します。単位に「m」、右の「1本=○m」の欄に「2.7」と入れます。左の数は0.3703703704本と自動で入り、mの仕入単価674.07円も自動で計算されます。割り切れない数を自分で出す必要はありません。

画面の例はブロックですが、単位を換えた単価の欄に換算後の単価が出る点は竪樋も同じです。見積りの候補には、mの行が換算の内容を小さく添えて別に出ます。選べば単位「m」とmの単価が入るので、竪樋12.0mをそのまま入力できます。提出単価を2,600円/本にしていれば、mでは2,600円÷2.7=962.96円です。材料と手間を分ける見積りなら、材料の行にこの単価をそのまま使えます。
働き幅・重ね代・ロスは、換算には入れない決まりです。ロスを見込むときは、見積りや積算の数量で足します。単価は保存されず、毎回計算されます。そのため、仕入単価を変えると換えた単価もあわせて変わります。
仕入先の請求書から単価を更新する(C+AIプラン)
C+AIプランでは、資材費マスタの一覧右上の「AI読み取り」が使えます。仕入先の請求書・納品書のPDFや写真から明細を読み取り、まとめて登録や単価の更新ができます。

ファイル(PDF・JPG・PNG、10MBまで)を選び、「読み取り開始」を押します。結果はそのまま登録されず、「AI読み取り結果の確認」画面を通ります。単価の変わる明細には「仕入単価を更新します」と理由が出るので、確かめてから「チェックした明細を取り込む」を押します。読み取りにはAIポイントを使います。
複数の仕入先の書類をまとめたPDFも、仕入先ごとに分けて取り込めます。鋼板屋と樋の問屋の請求書を1つのPDFにしても、仕入先ごとに読み分けられます。
AI読み取りで入るのは仕入単価までです。提出単価は入らないので、編集画面で入力してください。また、資材費マスタには仕入単価(原価)がそのまま表示されます。「設定」>「ユーザー管理」で「資材費」の権限を配る相手は、原価を見せてよい人に限ってください。プランの料金は料金プランのページで確認できます。
次の見積りから試すこと
全部を一度に変える必要はありません。次の見積りまでに、次の順で1つずつ試してください。
- 過去の見積書を1件開く:「一式」になっている役物と雨どいの行に印を付けます。拾い出しメモが残っていれば、棟包み10.0m、ケラバ水切り17.3mのように、m・個・箇所の行に分け直します。合計金額が元の一式と合うかも確かめます
- 単価表を作る:列は「名称・規格・単位・仕入単価・提出単価」の5つです。本体2〜3種、役物4〜5種、雨どいの軒樋・竪樋・部材を入れます。役物には展開幅の欄も足します
- 本で仕入れる材料をm単価に直す:竪樋なら1,820円÷2.7m=674.07円/mのように一度計算します。円未満の扱いも決めて単価表に書いておくと、毎回の計算が要らなくなります
- 備考の定型文を作る:伸び率の根拠、色・板厚、金具の扱い、別途の項目、有効期限の5行を決めて、見積書の雛形に入れておきます
1と2だけでも、次の見積書から「一式の中身は?」という電話は減っていきます。夜の見積り作業も、メモの数字を行に写すだけの時間に近づきます。
単価表を見積りの明細から候補で呼び出したい場合は、SITE BOARD を無料で使い始めることもできます。まずは手元の表計算ソフトで単価表を作り、自社の行の並べ方を固めるところから始めてみてください。