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見積書の書き方|工事の14項目と記入例、値引き・有効期限の文例

見積書の書き方を、工事の記入例つきで宛名から社印まで14項目の順に解説。値引きのマイナス表記と消費税の計算、有効期限・支払条件・除外事項の文例、法定福利費の内訳、建設業法の見積期間まで。そのまま自社のひな形に写せます。

見積書 書き方を表すイメージ図
目次

現場から戻ってから見積書を作り、気づけば夜遅くになっていませんか。工事の見積書の書き方は担当者ごとにばらつきやすく、「それは含まれていると思った」と後からもめる原因にもなります。この記事では、見積書に載せる14項目を上から順に、住宅の外壁塗装工事の記入例つきで説明します。有効期限・支払条件・除外事項の文例、法定福利費の内訳、提出前に見直す点まで、そのまま自社のひな形に写せる形でまとめました。

工事の見積書の書き方は14項目を上から順に埋めるだけ

後からもめる案件をたどると、原因は金額そのものより「書いていなかった条件」であることがほとんどです。残材の処分費、駐車場代、劣化がひどかった部分の下地補修。どれも見積書に一行あれば、その場の話し合いで終わった話です。逆に言えば、載せる項目を固定して上から順に埋めるだけで、もめごとの種はかなり減ります。

工事の見積書に必要な項目は次の14個です。

項目 書く内容 抜けたときに起きること
宛名・敬称 正式名称+御中/様 差し戻し、社内稟議に回らない
見積番号 日付+連番 再見積りとの区別がつかない
見積日 提出する日付 有効期限の起算日が不明になる
件名(工事名) 現場が特定できる名称 別現場の見積りと取り違えられる
工事場所 住所または現場名 遠方の運搬費の認識がずれる
工期の目安 着工時期と所要日数 引渡し日の食い違いが起きる
見積有効期限 提出日から〇日 古い単価のまま発注される
支払条件 時期・方法・手数料 入金が数か月先になる
合計金額と消費税 税抜・消費税・税込 税込か税抜かで争いになる
内訳・明細 数量×単価=金額 比較されず値切られる
見積条件・除外事項 含まないものを明記 追加工事を無償でやらされる
備考 天候・調査結果など 問い合わせの電話が増える
自社情報 社名・住所・連絡先・担当者 聞きたいときに連絡が取れない
許可番号と社印 建設業許可番号・角印 発注先として登録されない

この順番を毎回変えないことが、書式をそろえる一番の近道です。担当者が3人いれば3通りの見積書ができるのは、順番と言い回しが決まっていないからです。見積書の書き方を社内で統一するとは、要するにこの14項目と並び順を1つに決めることだと考えてください。

以降の記入例では、次の工事を例にします。木造2階建て住宅の外壁塗装工事で、外壁の塗装面積160㎡、足場の掛け面積250㎡、付帯部は軒天・雨樋・破風です。税抜合計1,107,800円、端数の値引き7,800円を引いて1,100,000円、消費税110,000円、税込1,210,000円。この数字を最後までそろえて使います。

表紙部分の見積書の書き方|宛名から合計金額まで

宛名は正式名称で書きます。「(株)〇〇建設」と略さず「株式会社〇〇建設」と書きます。法人には「御中」、個人には「様」を付けます。担当者名まで入れるときは「株式会社〇〇建設 工事部 〇〇様」とし、会社名に「御中」と担当者に「様」を重ねて付けないようにします。個人のお客様なら「〇〇 〇〇 様」です。前株か後株かの間違いは、相手の名刺か請求書で必ず確かめてください。

宛先 書き方の例 使う場面
会社宛て 株式会社〇〇建設 御中 担当部署・担当者がわからないとき
部署宛て 株式会社〇〇建設 工事部 御中 部署で見積りを受け付けているとき
代表者宛て 株式会社〇〇建設 代表取締役 〇〇 〇〇 様 官公庁・大手元請
担当者宛て 株式会社〇〇建設 工事部 〇〇 〇〇 様 依頼してきた担当者がはっきりしているとき
個人宛て 〇〇 〇〇 様 個人のお客様(施主)

誤り:株式会社〇〇建設 御中 〇〇様(御中と様の重ね付け)

見積番号は自社でルールを決めます。「20260708_01」のように日付+その日の連番にすれば、重複せず、後から日付順に探せます。番号があると「6月に出した見積りの件ですが」という電話がすぐ片付きます。請求書に見積番号を書いておけば、経理の突き合わせも早くなります。

件名は現場が特定できる粒度にします。「外壁塗装工事」だけでは、相手が3件同時に検討していると区別できません。「〇〇様邸 外壁塗装・付帯部塗装工事」のように、誰の、どこの、何の工事かが1行でわかる形にします。

工事場所は住所まで書きます。工期の目安は「ご契約後2週間以内に着工、着工から完了まで約14日間(天候により変動)」のように、着工の条件と所要日数の両方を書きます。日数だけだと、契約した翌週から始まると思われることがあります。

金額は税抜・消費税・税込の3段で書きます。

  • 見積金額(税抜) 1,100,000円
  • 消費税(10%) 110,000円
  • 御見積金額(税込) 1,210,000円

税込だけを大きく書いて内訳がない形は避けます。相手の社内では税抜で予算を組んでいることが多く、割り戻しの手間をかけさせることになります。

見積書の有効期限は「提出日から〇日」で書く

期限の長さは、材料価格の動きやすさで決めます。自社の基準を1つ決めておくと迷いません。

工事の種類 期限の目安
標準的な改修・補修 30日
鋼材・塗料など材料手配が絡む 14日
見積後に価格改定の通知が来ている 7日

書き方は2つあります。「発行日より30日間有効」は、日付を打ち直さなくてよいので複製して使う見積りに向きます。「2026年3月31日まで有効」は、年度末や相手の決裁日が決まっているときに使います。相手が期限を読み違えないのは後者です。

期限が切れた後に受注が決まったときは、必ず出し直します。見積番号を新しくし、備考に「本見積りは見積番号20260210_01の再見積りです」と旧番号を残します。金額を据え置く場合も、日付だけの書き換えはしないでください。

期限を書かないと何が起きるか。塗料の値上げがあった半年前の単価のまま「あの見積りでお願いします」と言われ、断りにくい状況になります。1行あるだけで、値上がり分を正面から相談できます。

支払条件は金額・時期・方法の3つを書く

「工事完了後、翌月末日までに指定口座へお振込みください」のように、いつ・どうやって・誰の負担かまで書きます。「完了後お支払い」だけでは、完了の翌日なのか翌々月なのかが決まりません。

工期が長い工事や材料費が先行する工事は、分割にします。割合と金額を両方書くのが要点です。

  • ご契約時(着工金) 40% 484,000円(税込)
  • 工事完了時 60% 726,000円(税込)

484,000円と726,000円を足すと1,210,000円で、税込合計と一致します。割合だけ書くと、相手が税抜に掛けて計算し、端数が合わなくなります。

振込手数料の負担も1行入れます。「振込手数料は貴社にてご負担をお願いいたします」と書いておけば、数百円の話で経理が確認の電話をかける手間がなくなります。

元請の締め日と支払サイトが決まっている場合は、相手の条件に書き換えます。「毎月20日締め、翌月末日現金振込」のように、相手の言葉をそのまま写すのが確実です。自社の標準条件を押し通すと、受注後に契約書と見積書が食い違います。

内訳・明細の見積書の書き方|数量と単位、「一式」を使ってよい場面

明細は「見出し行 → 明細行 → 小計行」を工種ごとに繰り返す形にします。外壁塗装工事の例です。

品名 数量・単位 単価 金額
仮設工事
足場設置・解体 250㎡ 850 212,500
飛散防止メッシュシート 250㎡ 200 50,000
小計 262,500
洗浄・下地工事
高圧洗浄 160㎡ 250 40,000
ひび割れ補修 25m 900 22,500
シーリング打替え 120m 900 108,000
小計 170,500
外壁塗装工事
養生 160㎡ 300 48,000
下塗り(シーラー) 160㎡ 700 112,000
中塗り(シリコン) 160㎡ 1,100 176,000
上塗り(シリコン) 160㎡ 1,100 176,000
小計 512,000
付帯部塗装
軒天塗装 28㎡ 1,000 28,000
雨樋塗装 42m 700 29,400
破風・鼻隠し塗装 38m 800 30,400
小計 87,800
諸経費
現場管理費 1式 60,000 60,000
廃材処分費 1式 15,000 15,000
小計 75,000

小計を足すと262,500+170,500+512,000+87,800+75,000=1,107,800円で、税抜合計と一致します。

数量と単位は、拾い出しの根拠がわかる形で書きます。㎡・m・箇所・人工・台・式を使い分けます。同じ塗装でも、面で拾うものは㎡、線で拾うものはmです。単位がそろっていない見積書は、相見積りの比較表に載せてもらえません。相手の担当者が単価を並べられないからです。

塗装面積の拾い方に迷うときは、計算手順をまとめた記事と、数量をその場で出せる無料ツールも使ってみてください。

塗装面積 計算を表すイメージ図 関連記事施工管理 塗装面積の計算手順|外壁・屋根の拾い出しから塗料の缶数・見積りまで 昼に測った寸法で、夜のうちに塗装面積の計算を終えたい方へ。30坪の総2階の家を例に、外壁・屋根・付帯部の拾い方、窓の引き方、屋根の伸び率、塗料の缶数、足場の面積との違いまで、そのまま使える数字で順に示します。 記事を読む 塗装面積と塗料の数量計算 無料ツール登録なしでも使えます 塗装面積と塗料の数量計算 間口と奥行を入れるだけで、外壁・屋根の塗装面積、樋・破風・軒天・雨押えなどの付帯部、塗料の缶数、見積の下書きまで自動で計算。2階建て・下屋(四角・L型・コの字・ロの字)にも対応し、立体図と展開図で塗る所がひと目で分かります。 ツールを使う

「一式」を使ってよいのは、現場管理費・諸経費・仮設の一部のように、数量で表しにくいものだけです。避けたいのは、塗装面積や下地補修のように数量で書けるものを一式でまとめることです。先ほどの工事を1行で書くと「外壁塗装工事 一式 1,107,800円」になります。金額は同じでも、相手には何をどこまでやるのかがまったく伝わりません。値切られたときに、どこを削るかの相談もできません。

明細は、合計金額を検算できる形にします。数量×単価=金額、小計の合算=税抜合計まで、必ず自分で1回たどってください。

値引きのマイナス表記と、消費税の計算

値引きは明細の最後に「お値引き」としてマイナス1行で入れます。単価を勝手に下げて辻褄を合わせるやり方は、次回の見積りでその単価が基準にされるため、自分の首を絞めます。

マイナスの書き方は会社によってばらつきます。よく見る5通りを比べます。

表記 伝わる相手 注意点
−7,800 誰にでも 白黒印刷やFAXでも消えない
△7,800 経理・会社の担当者 経理では通じても、個人客には伝わりにくい
▲7,800 経理・会社の担当者 経理では通じても、個人客には伝わりにくい
(7,800) 経理・会社の担当者 会計の書き方で、個人客にはマイナスと伝わりにくい
赤字の7,800 画面で見る人だけ 白黒印刷やFAXで赤が消え、プラスの金額に見える

個人客には「お値引き −7,800円」と文字で書いてください。記号だけに頼らず「お値引き」の言葉を添えれば、どの相手にも取り違えられません。

値引きの行の下には、値引き後の金額を1行で示します。

税抜合計                      1,107,800円
お値引き                         −7,800円
値引き後の税抜合計(NET金額)  1,100,000円

NET金額は、値引きを引いたあとの正味の金額という意味です。値引き前・値引き額・値引き後の3行を桁をそろえて並べると、相手は1,107,800−7,800=1,100,000を1回たどるだけで検算できます。値引き後の行がないと、消費税をどの金額に掛けたのかを相手が逆算することになります。

先ほどの例で端数を丸めます。

  1. 税抜合計 1,107,800円
  2. お値引き −7,800円
  3. 値引き後の税抜合計 1,100,000円
  4. 消費税(10%) 110,000円
  5. 御見積金額(税込) 1,210,000円

消費税は、値引き後の税抜合計にかけます。1,100,000×0.1=110,000円、1,100,000+110,000=1,210,000円です。値引き前の金額に消費税をかけてから引くと、780円ずれます。

円未満の端数処理は自社で統一してください。切り捨てが一般的です。数量に小数が入るとすぐ端数が出ます。たとえば160.5㎡×715円=114,757.5円なので、切り捨てて114,757円とします。行ごとに切り捨てるのか、合計で切り捨てるのかも決めておくと、請求書との差が出ません。

表紙と明細書の2枚に分けるかどうか

目安は明細の行数です。10行程度までの小工事はA4縦1枚にまとめます。工種が複数あり、小計行を入れると20行を超える工事は、表紙+明細書の2枚にします。先ほどの外壁塗装の例なら2枚が読みやすい分量です。

2枚に分けるときの役割分担は次のとおりです。表紙には件名・合計金額・有効期限・支払条件・見積条件を載せます。明細書には数量と単価を載せます。

見積書の表紙と明細書の役割分担を示した図
見積書の表紙と明細書の役割分担を示した図

注意したいのは、社内で回覧されるのは表紙だけという場面が多いことです。除外事項の要点は、表紙側にも3〜4行だけ書いておきます。「残材処分費・駐車場代は含みません」の一行が表紙にあるかどうかで、後の交渉がまったく違います。

ページ番号は「1/2」「2/2」のように全体枚数つきで入れます。FAXや複合機のスキャンで明細書だけ抜け落ちる事故は、今でもよく起きます。

後でもめない見積条件・除外事項の書き方

見積条件は「含むもの」より「含まないもの」を書くほうが効きます。含むものは明細を見ればわかりますが、含まないものは書かない限り誰にも伝わらないからです。お客様は「見積書に書いていないこと=当然やってくれること」と受け取ります。この認識の差が、追加工事の請求を断られる原因になります。

そのまま使える文例です。自社の工種に合わせて増減してください。

  • 本見積りは現地調査時に目視できた範囲に基づきます。着手後に判明した不具合の補修は別途お見積りといたします。
  • 追加・変更工事が生じた場合は、着手前に別途書面にてご提示し、ご承諾のうえ精算いたします。
  • 残材および産業廃棄物の処分費は本見積りに含みます(建物内の既存家財・不用品の処分は含みません)。
  • 現場内または近隣に、工事車両1台分の駐車スペースのご用意をお願いいたします。確保できない場合の駐車場代は実費精算とさせていただきます。
  • 高圧洗浄および電動工具の使用にあたり、現場の水道・電気をお借りします。
  • 近隣へのご挨拶は着工3日前までに当社にて行います。
  • 工事期間中の天候不良による工期の延長については、別途費用は申し受けません。
  • 本見積りに記載のない工事(〇〇、〇〇)は含みません。

追加工事は「別途書面で合意のうえ精算」と条件に書き込み、口頭の追加を受けない運用にします。現場で「ついでにここも」と言われたときに、職長が「事務所から書面を出します」と返せる根拠になります。

支給材料があるときは、支給の範囲・受け渡し場所・不足したときの負担を書きます。「〇〇は貴社支給とし、現場搬入までをお願いします。数量不足分は当社にて調達し、実費精算といたします」という書き方です。

工種別によく抜ける条件

工種 抜けやすい条件
塗装 水道・電気の借用、付帯部の範囲(雨樋・破風・軒天のどこまでか)、劣化がひどい下地の補修
内装 既存家具の移動、夜間・休日作業の割増、エレベーター養生と搬入経路の確保
屋根・板金 野地板の腐食が出た場合の追加、既存屋根材の処分費、雨天による工期延長
解体・設備 アスベストの事前調査の扱い、隠ぺい部を開けた後の変更

塗装で特に多いのが付帯部の範囲です。「付帯部塗装一式」と書くと、庇も水切りも雨戸も含むと思われます。先ほどの明細のように、軒天・雨樋・破風と項目を分けて書けば、含まれていないものは自然に伝わります。

内装で抜けやすいのは搬入経路です。エレベーターが使えず階段搬入になると、人工が変わります。「搬入はエレベーターを使用できる前提です」の一行を入れておきます。

屋根・板金では、既存屋根材の種類を条件に書き足すと安全です。「既存屋根材にアスベストが含まれる場合は、処分方法の変更に伴う費用を別途精算いたします」と書いておけば、撤去してから判明したときに話が進みます。

備考欄に書いておくと問い合わせが減ること

備考には、条件とまでは言えないが伝えておきたいことを書きます。

  • 工期の目安と着工可能時期。「ご契約後2週間以内に着工、約14日間で完了予定」のように書きます。
  • 天候による工程変更の扱い。塗装や屋根工事は雨で止まるため、あらかじめ断っておきます。
  • 現地調査で見つけた既存の不具合と、今回は含めていない旨。「北面基礎に幅0.5mm程度のひび割れを確認しましたが、本見積りには含めていません」といった書き方です。写真を添えるとさらに確実になります。
  • 連絡窓口。担当者名と携帯番号を書いておくと、事務所を経由した折り返しが減ります。

自社情報・許可番号・社印のルール

自社情報は、会社名・住所・電話・FAX・メールアドレス・担当者名をそろえて印字します。担当者名がないと、相手は代表番号にかけて取り次ぎを頼むことになります。急いで返事がほしいときほど、そこで止まります。

建設業許可を受けている場合は、許可番号を記載します。「〇〇県知事許可(般-6)第〇〇〇〇〇号」の形です。元請によっては、許可番号の記載がない見積書は社内の発注先登録に通りません。インボイスの登録番号(T+13桁)も入れておくと、請求のときに「登録番号を教えてください」と聞かれずに済みます。

見積書・注文請書・請求書の違いと、控えの保存期間

見積書は、取引の流れの最初に出す書類です。受注から入金までに、役割の違う書類が順に出てきます。

書類 役割 登録番号を書く意味
見積書 金額と条件の提示。この段階では契約は成立していない 相手が発注前に、登録事業者かどうかを確かめられる
注文書・注文請書 注文と請負を書面で取り交わし、契約の成立を示す 取引先の書式に欄があれば記入する
請求書 代金の請求。インボイス(適格請求書)として扱うのは通常こちら 相手が消費税の仕入税額控除を受けるときに必要になる

見積書に登録番号を入れるのは、請求書の段階で慌てないための前準備です。インボイスとしての記載事項は請求書の側で満たすのが通常の形です。細かい要件は国税庁の公式情報で確認してください。

取引書類の控えの保存期間は、法人は原則7年、個人事業主は5年が目安です。起算点や例外は国税庁の公式情報で必ず確認してください。メールでやり取りした見積書のPDFには、電子データとしての保存の決まりもあります。こちらもあわせて確かめておくと安心です。

期間がわかったら、誰が・どこに・何年置くかを社内ルールにします。法人の場合の例です。

  • 誰が:見積書を出した担当者が、提出した日のうちに控えを入れる
  • どこに:事務所の共有フォルダ「見積書控え」の年度別フォルダにPDFで入れる。紙の控えは年度ごとのファイルに綴じる
  • 何年:7年を目安に置く。捨ててよいかは、決算後に事務担当が国税庁の情報と照らして判断する

このルールを紙1枚に書いて事務所に貼っておくと、担当者が替わっても控えが散らばりません。

社印(角印)は、会社名の文字に少しかける位置に押すのが昔からの慣習です。文字にかけることで、印影だけを切り貼りされにくくする意味がありました。法律上の決まりではないため、正式な社名の右側にきれいに押しても問題はありません。

PDFで送る場合は、電子印(画像の印影)を使うのが一般的になっています。見積書は契約書ではないので、押印がなくても書類として成立します。ただし、相手の社内規定で「押印のある見積書」を求められることはあります。取引先ごとに一度確認しておくと、出し直しが減ります。

代表者名の記載と、担当者印の要否も相手の慣習に合わせます。官公庁や大手の元請では代表者名まで求められることが多く、個人のお客様向けでは担当者名だけのほうが親しみやすくなります。ひな形を2種類持っておくと切り替えが早くなります。

印紙については、見積書には不要です。印紙税がかかるのは請負契約書などの課税文書で、金額を提示するだけの見積書は対象外です。注文請書には印紙が必要になる場合があるため、契約段階で改めて確認してください。

建設業法で決まっている見積りのルール

見積書は商習慣だけの書類ではありません。建設業法第20条は、建設業者が請負契約を結ぶ前に、工事の種別ごとに材料費・労務費などの内訳を明らかにして見積りを行うよう求めています。注文者から請求があったときは、契約が成立するまでに、内訳を明らかにした見積書を交付しなければならないとされています。「一式 〇〇円」の1行だけの見積書が望ましくないのは、この規定の趣旨から見てもそうです。

もう一つ、元請として下請に見積りを依頼するときには、下請が検討するための期間を置く義務があります。建設業法施行令で、予定価格に応じた日数が決まっています。

予定価格 置くべき見積期間
500万円未満 1日以上
500万円以上5,000万円未満 10日以上
5,000万円以上 15日以上

この日数は「見積りを検討するための期間」です。やむを得ない事情があるときは短縮できる定めもありますが、金曜の夕方に図面を送って月曜の朝に金額を求める形は、法の趣旨に合いません。下請側の立場なら、期間が足りないときに「施行令で定められた見積期間をいただけますか」と切り出せます。

2025年12月に全面施行された改正建設業法では、材料費・労務費・法定福利費などの内訳を明らかにした見積書を作成することが、受注者の努力義務として位置づけられました。元請から「法定福利費を内訳に書いてください」と言われる場面が増えているのはこのためです。細かい内容は会社の立場や工事の規模によって変わるため、条文と改正内容は公式情報で確認してください。

法定福利費の内訳を求められたときの書き方

法定福利費は、健康保険・厚生年金・雇用保険などの会社負担分です。見積書には、明細の最後に1行足す形が一番わかりやすくなります。

法定福利費(事業主負担分)  1式  65,600円

金額の出し方は、手間代(労務費)に料率を掛けるだけです。先ほどの外壁塗装の工事で、社内の原価のうち手間(労務)の合計が400,000円だったとします。

  • 400,000円 × 16.4% = 65,600円

16.4%は、令和8年度の保険料率(健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金・子ども・子育て拠出金・雇用保険の会社負担分)から出した全国の目安です。健康保険料率が都道府県で違うため、会社のある場所によって16.09〜16.76%の幅があります。建設国保や健康保険組合に入っている会社、元請として労災保険料も含める場合は、自社の料率で計算し直してください。

この1行を明細に入れると、当然ながら合計も変わります。先ほどの例なら、税抜合計は1,107,800+65,600=1,173,400円、値引き7,800円を引いて1,165,600円、消費税116,560円、税込1,282,160円です。「元の金額に上乗せするのか、内数にするのか」は元請との取り決めによって異なります。上乗せか内数かを備考に一言書いておくと、後の確認が1回で済みます。

値引きの相談を受けたときは、法定福利費の行を値引きの対象から外して説明できるようにしておくと話が早くなります。保険料は会社が実際に納める費用で、現場の工夫で減らせるものではないからです。

16.4%の目安が何から出ているのか、自社の料率で計算し直すにはどうするのかを確かめたいときは、次の記事が役に立ちます。法定福利費の計算方法を1つずつたどれるので、元請に金額の根拠を聞かれたときにもそのまま説明できます。

法定福利費を表すイメージ図 関連記事見積・請求・原価 法定福利費とは|建設業の計算方法と何パーセントかを1つずつ 元請から「見積書に法定福利費を別に書いて」と言われて困っていませんか。法定福利費の計算方法は労務費×事業主負担率です。令和8年度の合計16.421%の内訳を保険ごとに分解し、手間代20万円・50万円の計算例と請求書への書き方まで示します。 記事を読む

建設業の見積書テンプレートを自社で作るときの決め方

ひな形(テンプレート)は、作り込むほど良いわけではありません。「毎回同じ部分」と「毎回変わる部分」を分けて、前者だけを固定するのが失敗しないやり方です。

毎回同じ部分(固定) 毎回変わる部分(空欄にする)
自社情報・許可番号・登録番号・社印 宛名・件名・工事場所
見積条件と除外事項の定型文 明細の数量と単価
支払条件・有効期限の既定の書き方 見積日・見積番号・工期

固定する部分をひな形に入れておけば、毎回考えるのは明細と現場ごとの条件だけになります。ここを分けずに前回の見積書をそのまま上書きしていると、前の現場の条件文が残ったまま出てしまいます。

Excelでひな形を作るときは、次の3つを先に決めておくと事故が減ります。

  1. 合計のセルは必ず数式にする。手入力の金額を1つでも混ぜると、行を直したときに合わなくなります。
  2. 行を追加する場所を決める。合計のSUM範囲の外に行を挿入すると、その行だけ合計に入りません。挿入用の空行を範囲の内側に1〜2行用意しておきます。
  3. ファイル名の付け方を決める。「[見積書]〇〇様邸外壁塗装工事_20260708_01.xlsx」のように、件名と見積番号を入れます。「見積書(修正2).xlsx」が増えると、どれを出したかわからなくなります。

工種ごとにひな形を分けるかどうかは、除外事項の中身で判断します。塗装と内装のように条件文がほとんど重ならないなら分けます。重なる部分が多いなら、条件文を全部載せた1つのひな形を作り、使わない行を消す運用のほうが抜けにくくなります。消し忘れが心配なら、条件文の先頭に「※該当時のみ」と目印を付けておきます。

保存場所は1か所に決めて、そこからコピーして作る決まりにしてください。個人のパソコンのデスクトップに置いた古いひな形が使われ続けるのが、書式がばらつく一番の原因です。単価を見直したときも、更新するのは1ファイルだけで済みます。書類の保管とひな形の整理は、次の記事もあわせて参考になります。

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提出前に見直す10のチェックポイント

出す前の3分で、後の3時間が助かります。印刷して次の順に見てください。

  1. 宛名の会社名が正式名称か。前株・後株、敬称の重複はないか。
  2. 件名に現場名が入っているか。前の現場名が残っていないか。
  3. 見積日は今日の日付か。有効期限が見積日より前になっていないか。
  4. 数量×単価=金額が全行で合っているか。指で1行ずつなぞって確認します。
  5. 小計の合算が税抜合計と一致するか。今回の例なら1,107,800円です。
  6. 消費税率と端数処理が自社のルールどおりか。値引き後の金額に掛けているか。
  7. 除外事項に、今回の現場特有の項目が入っているか。駐車場、残材、支給材の3つは毎回確認します。
  8. 前回の見積りを複製して作った場合、単価が古いままになっていないか。塗料や鋼材は数か月で変わります。
  9. PDFのファイル名に件名と見積番号が入っているか。「見積書.pdf」では相手のフォルダで迷子になります。
  10. 誰にいつ出したかを記録し、控えを保管したか。

複製して作った見積りの事故は、想像以上に多く起きます。日付・番号・現場名・単価の4つが古いまま出てしまい、しかも金額が合っているために気づかれません。複製したら、この4か所を先に直してから明細に入る順番にすると防げます。

紙に出して斜め45度から1分だけ眺めるのも有効です。画面では気づかない桁のずれや、行のずれが見えます。金額の桁は「百・十・万」と声に出して指差しすると、10倍・1/10の間違いがなくなります。1,100,000円と110,000円を取り違えた見積書を出すと、金額の信用そのものが落ちます。

送付後は、誰に・いつ・どの方法で出したかを残します。メールなら自分宛のBCC、手渡しなら控えに日付を書いておきます。「先週お渡しした見積り」の話が噛み合わないのは、たいていこの記録がないときです。

見積書の作成と提出をSITE BOARD(サイトボード)でそろえる

ここまでの見積書の書き方を毎回手作業で入れるのは手間がかかります。SITE BOARD(サイトボード)の見積り機能は、上から順に埋めれば14項目がそろう作りになっています。

サイドバー「施工管理」>「見積り」から「+ 新規作成」を押し、案件を選びます。案件名がそのまま見積書の「件名:」になり、その案件の顧客名が「宛名」に自動で入ります。宛名は取引先なら「御中」、個人なら「様」が付いて印字されるため、敬称の付け間違いが起きません。見積番号は「見積日の年月日+その日の連番」で自動採番されます。

見積りの新規作成画面。案件・宛名・見積日・有効期限・消費税率の欄と、見出し行・明細行・小計行が並ぶ明細表
見積りの新規作成画面。案件・宛名・見積日・有効期限・消費税率の欄と、見出し行・明細行・小計行が並ぶ明細表

明細は最初から「見出し行・明細行3行・小計行」の5行が並んでいます。工種ごとに見出し行と小計行を足していけば、この記事の内訳表と同じ構成になります。小計行は直前の見出しからの合計を自動で計算します。値引きはマイナスの単価を入れた行として入れられ、赤字で表示されます。品名の欄では、過去の見積りで使った明細や「資材費」マスタの候補が出るため、よく使う工種は入力が早くなります。

法定福利費の欄も明細と合計のあいだにあります。手間の行に「施工費(原価)」を入れるか、「手間代を直接入れる」に金額を入れると、手間代×16.4%の目安が表示されます。「法定福利費を明細に追加」を押すと、「法定福利費(事業主負担分)」の行が1式で明細の最後に入り、合計にも反映されます。金額はあとから直せます。

備考欄には支払条件や工期の目安を書き、有効期限を入力すると見積書PDFに印字されます。明細ごとの原価と粗利は黄色の欄で社内用に管理され、見積書には印字されません。原価を入れておけば、値引き後の粗利率をその場で見ながら判断できます。

用紙はA4縦(1枚もの)とA4横(表紙+明細書)から選べます。明細の見出し横で用紙を切り替えると、「縦型PDF 約○ページ」の目安と改ページ位置が表示されるので、明細が2枚目に1行だけこぼれる形を避けられます。ロゴと社印の有無も出力時に選べます。

見積りの編集画面。上部の「見積書PDF:」の帯に用紙の選択と表示・ダウンロード・印刷・メールで送信のボタンが並ぶ
見積りの編集画面。上部の「見積書PDF:」の帯に用紙の選択と表示・ダウンロード・印刷・メールで送信のボタンが並ぶ

出し方の記録も自動で残ります。「ダウンロード」を押せば「ダウンロード済み」、「印刷」なら「印刷済み」、メールを送れば「メール送信済み」に切り替わります。「表示」で確認しただけなら下書きのままです。誰にどう出したかが一覧の左端の色でわかるので、提出漏れを目で追えます。

「見積書をメールで送信」の画面。送信先・題名・本文の欄と、自動添付されたPDF、BCCで控えを送るチェック
「見積書をメールで送信」の画面。送信先・題名・本文の欄と、自動添付されたPDF、BCCで控えを送るチェック

メールは見積書PDFを添付した状態でこの画面から送れます。「自分にもBCCで控えを送る」が初期状態でオンなので、控えの保管が自動で済みます。A案・B案を出すときは一覧の「複製」を使い、サブタイトルを変えると件名の前に[ ]付きで印字されます。積算から見積りを作る流れは、次の記事にまとめています。

積算 見積り 作成を表すイメージ図 関連記事SITE BOARDの使い方 積算から見積りを作成する手順|案件登録で拾い出しの二度手間をなくす 拾い出しはエクセル、見積書は別ソフトで二度手間になっていませんか。SITE BOARD(サイトボード)で案件を登録し、積算から見積りを作成して見積書のPDFを出すまでの操作を、画面の順番どおりに説明します。資材費マスタの使い方も。 記事を読む

料金プランはこちら、実際に画面を触ってみるなら無料で使い始めるから登録できます。見積り・請求まわりのほかのテーマは見積・請求・原価のコラム一覧にあります。

まず自社の見積書のひな形を1つ決める

読み終えたら、今週出す1件でそのまま試してみてください。この記事の14項目を上から順に並べ、見積条件の文例を貼り付けて出す。それだけで、これまでとの違いが相手の反応でわかります。問い合わせの電話が減り、「これも含まれますよね」の確認が来なくなります。

次に、よく使う除外事項を自社の工種に合わせて1つのテキストにまとめます。メモ帳でもかまいません。塗装なら水道・電気の借用と付帯部の範囲、屋根なら野地板の腐食、内装なら家具の移動と搬入経路です。毎回そこから貼り付ける運用にすれば、忙しい日でも条件の書き漏れがなくなります。

その文例を育てる材料は、過去にもめた案件です。「残材を持ち帰ってほしいと言われて無償で処分した」「駐車場代を自腹で払った」。思い出せる案件をいくつか挙げ、その原因になった条件を1行ずつ足していきます。5件も振り返れば、自社に必要な除外事項はだいたい出そろいます。

担当者が複数いる会社は、見積書の書き方とひな形を1つに固定します。書式が人によって違うと、お客様は「前回と書き方が違う」と感じ、金額の根拠まで疑われます。ひな形を決めたら、保存場所を1か所にして、そこからしか作らない決まりにしてください。

明日の1件から、順番を固定するところだけ始めてみてください。

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